江戸箒のご紹介

江戸箒の特徴

日本各地には、その土地・風土・気質に応じた様々な箒がございます。 
そうした様々な箒の中で、私共の「江戸箒」の特徴としましては、 「軽さ」・「コシ」・「シンプルな装飾(編み上げ)」の3点が挙げられます。

江戸箒の写真

「軽さ」の理由

江戸箒の軽さの理由

江戸箒は柄竹と穂先のバランスを考慮し、「一番軽く感じさせる」編み上げを採用しています。柄竹と穂先の接合部分における「重心」を分散させ、箒を手にした時に、いかに「軽さ」を感じさせるか・・・。長年の試行錯誤を重ね、その結果生まれた、変更の仕様が無い「江戸箒のフォルム」。今なお現在に至っても、その製法を変えていません。それ故、職人への握力・視力の負担や、制作本数に限りがあるため、「機械化」「低コスト化」「大量生産」が困難な道具です。また、それ故に、図らずしも「用の美」・「機能美」を体現している・・・との、ありがたいお言葉を、お客様から頂戴することがございます。

「コシ」の理由

箒を叩くイメージ

収穫した「ホウキモロコシ」の選別作業を職人が丁寧に行います。一本一本の草が持つ「細さ・太さ」・「柔らかさ・硬さ」「長さ・短さ」「色」といった性質・違いを、職人が長年培った「手の感触(五感)」で選り分けていきます(細かくいえば20等級程選別致します)。

その中で職人の基準に適合した上位3等級の草を採用し、編み上げていきます。

結果、「手に取り易く」・「よくしなり」・「折れにくく」・「掃きだしが効き」・「型崩れがおきにくい」、江戸箒が出来上がります。また、バネの効いたホウキモロコシの「コシ」により、手首の負担も軽くなり、疲労度も軽減されるメリットがございます。見た目では判断し難い、この丁寧な「草の選別」が、江戸箒の機能性全般を押し上げているのです。

「シンプルな装飾(編み上げ)」の理由

シンプルな編み上げ

弊社の箒は「江戸箒」と称するが故、「江戸っ子」のニーズに応える必要がございました。

「江戸っ子」は合理的、悪くいえば「せっかち」で「吝嗇」。装飾的な美しさを追及しても箒の機能性・耐久性が向上する訳ではない、であれば装飾に時間をかけず、製作本数を上げることが求められます。また「江戸っ子」は美的センスにおいても「シンプル」さを好み、「粋(クール)」を尊ぶ、「モダン」な一面があったことも、江戸箒の装飾に影響していると言えましょう。

江戸箒職人頭・高木清一

箒職人高木清一さんの写真

「なくなりはしないね」~ 高木清一は語る

箒職人頭、高木清一。
昭和11年3月11日生まれ。

同じく箒職人であった父の姿を見て育ち、中学生の頃には「仕方なしに」箒作りを手伝っていたという。箒をつくり始めてから(職人暦)60年以上経った現在、「今では両親に感謝している」と笑う。

「勉強中」「思う通りにいかないねぇ」と、いまだ箒造りへの向上心・探究心を失わない高木。このように語る高木の手によって造り上げられた「江戸箒」は単なる掃除道具として片付けられない、ひとつの「芸術作品」の域に達しているといえよう。

しかし、「江戸箒」を「芸術品」として扱うことには抵抗がある、という。「使われてナンボ」・「消耗品だから」とあくまで「生活に根ざした道具(モノ)だから」とも主張する。「だからといって粗末に扱ってほしくない。丁寧に扱ってほしい。長持ちもするしね」と穏やかな、けれども毅然とした表情で語る高木の言葉は、職人としての「誇り」と、一人の人間としての「高木清一」を示すものとして、大きな説得力をもっている。

箒職人の手先の写真

さまざまなメディアで取材される身でありながら、「何度やってもあがちゃって・・・だめだねぇ」と照れくさそうに笑う「やさしさ」と、50年(半世紀)ものあいだ培ってきた職人としての「きびしさ」。その相反する「やさしさ/きびしさ」が、そのまま「江戸箒」に反映され、「芸術品/日用品」という相反する要素をもった「江戸箒」を生み出していく秘密となっている(現在、高木への直接取材はお断りしております)。

「自分でつくっていくもの」「教えられたことだけやっているのではだめ」ーこれは高木にとっての職人像とは・・・との問いに対する答えだが、これはどんなジャンルの仕事でも「プロ」としてやっていくための条件として、そのままあてはまる言葉ではないだろうか。

箒職人の高木さんの手元

「僕は不器用」という高木だからこそ、自分で考え、工夫し、箒を作ってきた。「みようみまねだった」ともいう。確かに「手取り足取り」教えられ、また器用であれば、すぐに「箒」はできたかもしれない。また時間も手間もかけずに済んだかもしれない。だが、一見無駄かもしれないその「手間ひま」が「からだ」で「仕事」を覚えさせることになり、また「不器用さ」が「自分で考え」、「工夫する」土壌をつくりあげているのだとしたら、その「不器用さ」もまた「才能」だったのではないだろうか。  

「お客さま個人個人の要望に応じた箒をつくってみたい」と高木はいう。いわば「オーダーメイドの箒」。弟子の成長を待って、いつか試してみたいと照れくさそうに語る。

「職人」、もしくは「江戸箒」は今後も続いていくのか、との少し意地悪な質問に、高木は、「減ってくるだろうけど・・そうだね・・なくなりはしないと思うよ」とまたも照れくさそうに笑った。

箒職人の高木清一の仕事道具

(江戸(天保)から明治~大正~昭和~平成、そして令和になった現在、職人頭・高木の指導の下、弟子を含め3人の職人が江戸箒を作り続けています)。

文責 京橋本店営業部・高野